三日月の雫
でも、啓介さんは僕よりも一枚上手で。
『お兄ちゃんが、ユウヤくんに総長を譲れって。年少出て、永ちゃんが総長やってたら殺すぞって』
次第に、啓介さんの言葉は脅迫と化していた。
僕はそれを機に、自分の人生ってものを考えた。
――そして。
心機一転とでもいうのか、族を引退すると同時に会社も辞めた。
総長は啓介さんが言ったとおり、ユウヤに継いだ。
『……公務員!?』
僕は元暴走族の総長という過去を持ちながら、公務員専門学校に入学した。
周囲のヤツらは驚きのあまり言葉を失っていた。
なんでまた公務員?と首を傾げる仲間に、僕は、安定した職に就きたいからと笑って答えた。