三日月の雫
・報復・
「遼太郎くんの家に寄るんだったら電話してよ」
嬉しそうな笑顔でそう言いながら、かんなは遼太郎の部屋に入り、コートを脱ぐ。
黙って遼太郎の家に来たことを怒るわけでもなく、かんなは「まったくもう」と笑みを崩さなかった。
余裕すら感じるかんなの態度に、僕は凍りついた。
「ねぇ、人の家に2人きりなんて、ドキドキしない?」
「……別に…」
僕はポケットに入れた携帯に手を触れた。
もうすぐ、柚羽が来る。
何とかして、連絡しないと……。
「遼太郎くんのお父さん単身赴任中で、お母さんも一緒に行ってるんだよね。いいなぁ」
どうでもいい話を、かんなはゆっくりと話す。