三日月の雫

建設会社の社長は、退職する僕を引き止めた。

でも、決して譲ろうとしない僕に、公務員試験に落ちたらいつでも戻って来いと、笑顔で見送ってくれた。



専門学校に入ると同時に、僕はコンビニでのバイトを始めた。

とにかく、何か新しいことを始めてみたかった。

今まで自分が経験したことがないようなことを。



そんな自分を見て、僕は高校時代のことを思い出す。

高校の頃、同じクラスのヤツらは授業が終わると、部活にバイトと、高校生活を満喫していた。


それに引き換え僕は、真っ直ぐ家に帰り、夜になると特攻服に身を包んでバイクを走らせていた。

そんな毎日もそれなりに楽しかったし、啓介さんの後を継いだという責任感から不満なんてものはなかった。


ただ、普通の高校生活ってどんなものなんだろうと羨ましいと思う気持ちがあったことは事実だった。

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