三日月の雫
「あたしにもつけて。そうしたら、すぐ帰るから」
そう言いながらかんなは、セーターを脱ぎ捨てる。
なぜ、こんなことを……。
でも、迷っている暇も、考えている暇もない。
急がないと、柚羽が来てしまう……。
かんなが僕にしたのと同じように、僕はかんなの胸元に唇を押し付けた。
「もういいだろう?」
かんなは満足したような顔で僕を見る。
――ピンポーン……
玄関のチャイムが鳴り響く。
その音に、僕の身体に重い何かがのしかかった。