三日月の雫
「遼太郎が出て行った後にかんなが……」
そう言いかけると、真後ろのドアが開かれようとする感触が背中に伝わる。
僕は必死に力を込めて、開かないように体重をかけた。
でも、かんなは僕以上に必死だったのだろう。
全身の力すべてを込めたらしく、押し合うドアはかんなに味方した。
「……永ちゃん、お客様?」
そこには、バスタオルだけを身体に巻きつけたかんなが笑っていた。
かんなは柚羽がここに来ることを知っていた。
「あら?あなた……」
勝ち誇ったような顔のかんなが、見下すように柚羽に笑いかける。
それは嘲笑といった方が正しいのかもしれない。
「用がないのなら帰ってくれないかなぁ。分かるでしょ?」