三日月の雫
後ろからかんなが僕の身体に手を回す。
僕の視界に入る両腕の無数の切り傷。
それを見て僕は強く振り払うことができず、優しく振りほどく。
「やめろって」
腕を掴んだ手に伝わる、ザラザラとした傷痕の感触。
僕が柚羽に会うから。
僕が柚羽を好きになったから。
その白い腕に何の容赦もなく、次々と刻まれていった痛々しい傷痕。
目の前には、今にも泣き出しそうな柚羽。
こんなにも君を思っているのに。
この傷痕が僕をいつまでも縛り付ける。
「柚羽……」