三日月の雫

・喪失感・


「ここで会おうとしてたんだ」



柚羽が帰った後。

かんなはバスタオル姿のままベッドに腰を下ろし足を組む。



「お兄ちゃんが携帯で話してるの聞いたの。『今夜』『会社に』『遼太郎』。キーワードを拾い上げて、もしかしたらと思ってね」



普段は天然入っているクセに、こういう時は人一倍カンが良い。

そんなかんなの性格を初めて恨んだ。



「……ねぇ、永ちゃん」



かんなの顔を見ることができない。

僕の耳に、カチカチという不気味な音が聞こえてくる。


ハッとして顔を上げると、かんなは鈍く光るカッターナイフの刃を腕に押し当てていた。



「やめろっ……」

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