三日月の雫
飛び掛かるる僕を前に、カッターの刃はかんなの腕を走っていく。

一直線に切られた傷から、真っ赤な血があふれ出る。



「今度はタダじゃすまないから」



恐怖さえ感じるかんなの姿を前に、僕は膝を折って頭を下げた。



「……頼みがある」

「なによ?」



こんなにも非力な自分に腹が立つ。



「もう彼女とは二度と会わないから。そのかわり、2つ、オレの頼みを聞いてほしい」

「……2つも?」



呆れたようにかんなは言ったけれど、まぁいいわと僕の話に耳を傾けた。



「最後に一度だけ、彼女と会わせてほしい。それと、彼女に変なマネは二度としないでほしい」

< 177 / 238 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop