三日月の雫
かんなに頭を下げてまでも頼みごとをするなんて初めてだった。

柚羽と出会う前は、かんなは自分を傷つけて僕に「そばにいてほしい」と頼み込んだ。


けれど、今は違った。

かんなが傷つける対象は自分。

そして、柚羽という僕の大切な人が加わった。


かんなは僕の申し出た頼みごとにしばらく考え、そして…。



「分かったわ。本当に最後なのよね?もし、今日みたいなことがあったら……。分かってるわね?」

「……あぁ」



こんなにすんなりと許してもらえるのなら。

遼太郎たちと陰でコソコソしないで、最初からかんなに頭を下げれば良かったんだ。


そうすれば柚羽を傷つけることなんてなかったのに。

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