三日月の雫
第7章―未来―
・最後の夜・
翌日の夜。
あれだけ電話に出なかった柚羽だったけれど。
訪ねてきた僕を帰すことなく部屋に通してくれた。
「どうしたの、それ」
昨日、遼太郎に殴られた口元には青あざができていた。
とても目立ちすぎて、青あざに気付いたのは柚羽で何人目だろうと思った。
僕は苦笑いしながら「遼太郎にやられた」と言った。
柚羽の部屋に来ると、僕はいつも同じ場所に座る。
僕が座ってから、柚羽は灰皿を差し出す。
以前は適当な空缶だったり、僕の携帯灰皿だったりしたけれど、いつの間にか柚羽は僕用にと灰皿を用意してくれていた。
透明のガラスでできた、とてもシンプルな灰皿。
タバコの灰と吸殻で汚してしまうのが気が引けるほど、いつもピカピカに光っていた。
「遼太郎が、中途半端なことしてんじゃねぇって。どっちかにしろってさ」