三日月の雫
深刻な問題なのに、僕は笑って柚羽に言う。
柚羽は力なく笑いながら小さな声で、呟くようにして言った。
「かんなさんの方にしなきゃ」
僕はそんな彼女の頭を優しくポンポンと叩く。
「……本当に、自分のことは後回しなんだな」
「そんなことないよ」
今日で最後とは思えないほどに、僕と柚羽の間にゆっくりとした空気が流れる。
何も言わないけれど、今日が最後だと、もしかしたら柚羽は気付いているんじゃないかと思った。
「柚羽、ごめんな」
「なにが?」
「昨日のこと」
「……謝ったりしないで」