三日月の雫
本当は何もなかったと言いたかった。
でも、昨日は何もなくても、柚羽と会いながらもかんなを抱いていたことは事実だったし……。
それに今は、何を言っても言い訳になるだけだ。
「ねぇ、永輝。……抱いて?」
突然の、柚羽の言葉。
感情も何も入っていない、言葉だった。
僕はそれまで吸っていた短くなったタバコを灰皿に押し付けた。
「できないよ」
よく、せめて最後の思い出にとベッドを共にする話は聞く。
でも、僕にはできない。
君のぬくもりを知ってしまったら、僕は離れることができなくなる。
同時に、君の身も心も傷つけてしまうから。
「柚羽を抱くことはできない」