三日月の雫
僕は柚羽に、そして、道を踏み外さないようにと自分にも言い聞かせた。



「……冗談だよ」



心の中で、何度も、何度も柚羽に言う。



――ごめん、ごめん……。

好きだよ。

ずっとそばにいたい……――。


決して、言えない言葉だった。



「永輝、聞き流してね」

「うん?」

「……あたし、永輝を好きだよ。永輝の気持ちがどこにあっても、自分がもういいと思えるまで、永輝を好きでいるから」



痛いほどに分かっている、柚羽の気持ち。

それは僕の柚羽に対する気持ちでもあった。


僕も同じ気持ちだよと、言いたい。

でも言ったところでどうなる?

< 186 / 238 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop