三日月の雫
真夜中に過ごした君のアパート。
あの部屋で、君は何を想っている?
僕が使い続けた灰皿は、今、どこにあるのかな。
季節は、僕の心だけを置き去りにして変わっていく。
春の暖かい風は、湿った生暖かい風へと変わる。
大きな空は、それまで笑顔を振り向いていた太陽を消し去り。
憂いを帯びた雲が毎日のように涙を流す。
「あー、もう。やだっ!なんで梅雨ってもんがあるのかな」
「…しかたないだろ。こればっかりは」
梅雨の真っ只中。
洗濯物が乾かない、どこにも遊びに行けないと、かんなはグチをこぼす。
「ジューンブライドが幸せになれるって、なんか分かるような気がするわ」
最近かんなは、結婚情報誌を目にするようになった。