三日月の雫
別に、プロポーズしたわけでも、それらしいことを言ったわけじゃない。
僕が「なんでそんな雑誌を?」ときょとんとした顔で聞くと、
かんなはただ笑って、「おもしろそうだったから」と答えるだけだった。
ただの興味本位とは言うけれど、結婚式場やらドレスやら、真剣に眺めてはチェックしている。
「それは、永輝くんからのプロポーズを遠まわしに期待してるんだよ」
遼太郎の言葉で、僕は自分の人生が終わったような気がした。
日曜の昼下がり。
しとしととしつこく振り出す雨の中。
遼太郎に誘われて、服を買いに行く。
かんなは「雨の中買い物になんて行きたくない」と僕の家に引きこもっていた。
「オレは、しないといけないのか?」
「……そんなの、永輝くんが決めることだろ」
「まぁ、そうだけど」