三日月の雫
デパートの中。
僕はふと思い立って宝飾店へと歩き出した。
「永輝くん?」
置き去りにされた遼太郎が懸命に僕の後を追いかけた。
宝飾店へと真っ直ぐに歩く僕の前を、遼太郎が大きな身体で遮る。
「何考えてんだよ。本当に結婚する気?」
「……するよ」
「永輝くん!」
僕は遼太郎の身体を押しのけて、目の前に迫ってきた宝飾店へと足を踏み入れた。
「勝手にしろよ!」
後ろでそう叫ぶ遼太郎の声が聞こえたけれど、僕は振り向かなかった。