三日月の雫

かんなは以前、付き合っていた彼女だ。

別れた今も、付き合っていた頃と同じような関係が続いている。


僕の心はかんなにはない。

かんなはたびたびヨリを戻そうという。


でも、僕はそれを静かに笑って拒否する。


気持ちのない相手と付き合うことはできない。

それなのにこんな関係が続いているのは………。



「あ、流れ星!」



かんなが夜空を指差す。

長袖のシャツの裾がわずかに上がり、色白の腕から無数の切り傷が覗く。



『イヤよ!永ちゃんと会えないなんて、あたしには耐えられない!』



かんなの悲鳴のような泣き叫ぶ声が頭に響く。


完全にかんなとの関係を絶とうとしたあの夜。

僕の目の前でかんなはカッターナイフで自らの腕を何度も何度も切りつけた。


< 2 / 238 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop