三日月の雫
かんなは以前、付き合っていた彼女だ。
別れた今も、付き合っていた頃と同じような関係が続いている。
僕の心はかんなにはない。
かんなはたびたびヨリを戻そうという。
でも、僕はそれを静かに笑って拒否する。
気持ちのない相手と付き合うことはできない。
それなのにこんな関係が続いているのは………。
「あ、流れ星!」
かんなが夜空を指差す。
長袖のシャツの裾がわずかに上がり、色白の腕から無数の切り傷が覗く。
『イヤよ!永ちゃんと会えないなんて、あたしには耐えられない!』
かんなの悲鳴のような泣き叫ぶ声が頭に響く。
完全にかんなとの関係を絶とうとしたあの夜。
僕の目の前でかんなはカッターナイフで自らの腕を何度も何度も切りつけた。