三日月の雫
・失うもの・
「ありがとうございました」
指輪を購入してから受け取りまで、あっという間だった。
珍しく残業のなかった会社の帰り、僕は宝飾店へ立ち寄り、指輪を受け取った。
大切な指輪が車に乗っているのかと思うと、僕の運転はいつもと違って慎重になっていた。
「………?」
帰り道。
かつてのバイト先でもあるコンビニの前を通る。
24時間経営のコンビニはいつ、どんな時でも店内に煌々と電気が灯り、客の姿が目に付いていた。
それなのに。
店内は真っ暗で、人が出入りしている気配すらなかった。
ふと見上げると、高々と掲げられていたコンビニの大きな看板が取り外されている。