三日月の雫
かんなの手を振り払おうとした瞬間。
見覚えのある、大切な物が目に止まった。
「永ちゃんったら、あたしの指輪のサイズ忘れたの?キツくて外れないわよ」
そう笑うかんなの左手の薬指。
僕の名前が刻まれた、柚羽を思って買った指輪がはめられていた。
あの時、やっぱりかんなは見つけたんだ。
ティッシュに包まれて、引き出しの奥で眠っていた指輪を。
いつか、もしかしたら……柚羽の指に納まる時がくるかもしれないと。
僅かながらそう願っていた指輪は、僕の気持ちなど無視して、違う指へと身を投げてしまった。