三日月の雫

女だからこそ。

結婚に興味を抱いていて、頻繁に結婚情報誌をチェックしていたかんなだからこそ。

その指輪が、ただの指輪ではなく、結婚指輪であることに気付く。



「なんなの?永ちゃんも、あの女も、あたしをバカにしてるの?」



気が狂ったように次から次へと、叫ぶようにして言葉を吐き出すかんな。

僕は何の弁解も、真実さえも口にすることができなかった。



「あたしを何だと思ってるの?永ちゃんは指輪だし、あの女は灰皿を!」

「……灰皿?」



かんなは我を失うと、真実をポロリと口にすることがある。

柚羽に嫌がらせをしたこともそうだった。



「灰皿って、なに?」



そして、僕が突っ込むと、真実をすべて語りだす。

それなのに今は、冷静に聞く僕を前に、かんなは口をつぐんだ。

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