三日月の雫
「……かんな。灰皿がどうした?」
僕の知らないところで、かんなが彼女と接触したのは明らかだった。
雨足が強くなる。
僕はワイパーの速度を早くした。
「……あの女、永ちゃんが使ってた灰皿を大切にしてた」
「…柚羽に会ったのか?」
「……会ったわよ!灰皿も壊してやったわよ!」
……柚羽に何もしないからと。
そう約束したから、僕はかんなのそばにいた。
それなのにかんなが柚羽と接触したのは。
隠れて結婚指輪を買ってしまった僕への代償なのだろうか。
「………かんな?」
混乱と絶望の渦の中で、僕はかんなの言葉が引っかかった。