三日月の雫
かんなは横からハンドルを奪い、力いっぱい回した。
予期さえしなかったかんなの突然の行動に、僕の手が一瞬、ハンドルから離れる。
僕はとっさにブレーキを思い切り踏んだ。
――キキキーッ!!!!
すさまじいブレーキ音が、雨音と共に耳に飛び込んでくる。
同時に。
目の前にガードレールが現れたかと思ったら、大きな衝撃音とともに消え去る。
そして、新たに現れた景色は。
雨で濡らされたたくさんの木々と、どこまでも続く奈落の底だった。
――永輝……。
遠くで、柚羽の声が聞こえたような気がした。