三日月の雫
・国道・
目覚めたとき。
僕は自分が事故に遭ったことをちゃんと記憶していた。
ガードレールを突き破って、車ごと転落した。
叩きつけられた身体には痛みなんてものが全くなかった。
原型を留めていない僕の車。
炎上しなくてよかった、なんて呑気なことをふと思う。
『……づいて……、……のニュー……です』
直前まで流れていたラジオ。
まだ自分は機能しているのだと、必死に、もがくようにしてニュースを伝えようとしていた。
『……倒れている……。……さんと見られ……、……転落した……』
ノイズではっきりと聞き取れなかったけれど、誰かが転落したというニュースなのだということは分かった。