三日月の雫
「……柚羽…」
久しぶりに見る、彼女の顔。
やっと会えたのだと、涙が出そうになる。
その姿に引き寄せられるようにして、僕は彼女の元に駆け寄った。
けれど、その逸る足はすぐにピタリと止まった。
柚羽の隣には長身の男が立っていた。
そして、その男は柚羽のアパートに入っていった男だった。
――そういうことか……。
すぐに状況が理解できた。
僕が訪れていたあのアパート。
柚羽と過ごした僅かな時間。
全てが、今ではその男のものになっているのだと。