三日月の雫
なぜ、僕の姿が見えるのだろうか。
「………柚羽?」
呆然としながらも、僕もまた、確かめるようにして柚羽の名を呼ぶ。
「永輝……」
柚羽は止めようとする男の手を振り払うと僕の元に駆け寄り、そのまま自然と胸に飛び込んできた。
すでにこの世の者ではない僕と。
今もこの世界で生きている君が。
目を合わせて、そして抱き合っている。
そんなことがあり得るのだろうかという疑問。
でも、こうして堂々と柚羽を抱きしめることができた今、そんなことはどうでもよかった。