三日月の雫
「……なんで…」
あまりにも突然で、そして予測さえしていなかったことに、僕は呟くことしかできなかった。
「ベランダから落ちちゃって。ドジでしょう?」
呆然とする僕とは逆に、彼女はおどけ、そして笑う。
ベランダから落ちた。
あの日僕が死んだ時に、ラジオが必死に伝えていたニュースがふと頭をよぎる。
『オレも転落してしまったよ』
誰かが転落したというニュース。
それが柚羽とは限らないけれど、転落という共通点からか、頭から離れなかった。
「……晶。……柚羽のこと、ありがとう」