三日月の雫
「21」
そう答えた後で、これ以上、彼女の会話の引き出しは開かないだろうと思った。
「大学生?」
「そうです」
成立しない会話のキャッチボール。
それよりも驚いたのは僕自身だった。
これまで何人か、新人バイトが入ってきたけれど、自分から話しかけたことなんてなかった。
ましてや、自分の休憩時間を早めてでも後を追って、話をするなんて。
「大学って、そこのR大?」
「はい」
「ウチ、そこの学生が多いから、すぐに友達できるよ」
「はい」
一方的に話す自分。
なぜ、こんなにもスラスラと言葉が出てくるのか不思議でならなかった。