三日月の雫
たった、一瞬――。
理由なんて、分からない。
ただ、彼女を好きだと思った。
もう少し、一緒にいたいと。
明日も、あさっても、ずっと会いたいと……。
「次に会う時は成長してるかな」
「えっ?」
「レジとか、バリバリできるようになっていたりして」
速いスピードで鼓動する胸を抱えているくせに。
僕はそれをごまかすように、冷静に彼女に言った。
こんな僕の今の気持ちなんて、彼女にはとうてい、伝わらないだろう。
沢井さんは監視カメラのモニターに写った柳さんの姿を見て、ハッとし、慌ててバックルームを出て行った。
頭の中をぐるぐると駆け回る、彼女の姿。
次第に彼女の姿は消え、かんなが現れる。
――ダメだ。
僕は、かんなのそばにいないといけない……。