三日月の雫
「…ヘンなの。ローソク立てるね」
嬉しそうに準備を始めるかんなを前にして、僕が考えていたのは沢井さんのことだった。
ほんの数時間、一緒に働いただけ。
言葉を交わしたけれど、会話らしい会話じゃなかった。
どんな性格なのか、どんな毎日を送っているのか。
付き合っているヤツがいるのか……。
何一つ、君のことを知らないのに。
22歳の誕生日。
僕は、初めて会った君を、好きだと思った。
たった一瞬で……――。