三日月の雫

「…ヘンなの。ローソク立てるね」



嬉しそうに準備を始めるかんなを前にして、僕が考えていたのは沢井さんのことだった。



ほんの数時間、一緒に働いただけ。

言葉を交わしたけれど、会話らしい会話じゃなかった。


どんな性格なのか、どんな毎日を送っているのか。

付き合っているヤツがいるのか……。

何一つ、君のことを知らないのに。



22歳の誕生日。

僕は、初めて会った君を、好きだと思った。


たった一瞬で……――。

< 33 / 238 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop