三日月の雫
・会えない日々・
あれから一週間。
沢井さんとは一度も顔を合わせていなかった。
彼女の友達の柳さんとは、シフトが一緒になったり入れ違いだったりで、何度も顔を合わせていた。
「……でね、柚羽ったら、『スリランカ』って答えるところを、『好き』って言っちゃったんですよ。50過ぎた教授にですよ?教授は真に受けて固まるわ、みんなは爆笑するわで……」
全く共通点のなかった僕と柳さんには、沢井さんという共通点ができた。
柳さんは僕との会話に詰まると、いつも沢井さんの話をした。
顔を合わせていない一週間。
柳さんの話のおかげで、僕は彼女を身近に感じることができた。
バイト帰りのシフトチェック。
僕は自分のシフトより先に沢井さんのシフトをチェックしていた。
……明日は17時からか。
一度も顔を合わせない、酷なシフト。
同時に、彼女のシフトを毎回のようにチェックする自分は、実はストーカーの気があるんじゃないかと思った。