三日月の雫
「分かったぁ……」
口をへの字に曲げて、かんなが渋々頷く。
バレたら大変なことになりかねないことぐらい分かっていた。
けれど……。
それでも僕は、解放されたかったんだ……。
「あー、結崎さん、遅いっすよ!」
飲み会の場所はカラオケボックスだった。
歌いたいヤツは歌え、飲みたいヤツは飲め、という自由な飲み会。
室内をぐるりと見渡す。
そこに、彼女の姿はなかった。
解放されたいから。
ただそれだけの理由だと思っていた。
でも実際は、彼女に会えると期待していた自分がいた。