三日月の雫
「そういえば、新しい子入りましたよね。柳さんの友達!あの子とも一度も顔を合わさないままで……」
沢井さんのことだ。
悔しそうに言うそいつを見て、僕は少しだけ自慢したい気になった。
たった一回しか一緒に仕事したことがないけれど……。
『オレ、一緒のシフトに入ったよ』って。
「あー、そうそう。沢井柚羽ちゃんって言うんですよね」
「あぁ、らしいな」
でも僕は、興味なさそうに答えた。
「結崎さん、何か飲みます?」
「あぁ、うん。自分で頼むから」
目の前のメニューを広げる。
悩むまでもない。
酒が飲めないんだから、ウーロン茶だ。