三日月の雫
「……永輝。沢井さんは柚羽ちゃんだよね」
それが少し悔しくて、僕は勝ち誇ったように彼女に言う。
だけど、彼女はそんな僕の気持ちなんて知るはずもなくて。
「はいっ、柚羽ちゃんです!」
と嬉しそうに、おどけて笑う。
「永ちゃん!…って矢沢みたいだ」
「ははは。永ちゃんなんて、呼ばれたこと……」
そう言いかけて、ハッとする。
――……かんな。
解放されたつもりなのに、些細なことで、また僕は縛られる。
「あー、柚羽ちゃん、ウーロン茶か何か飲んだほうがいいんじゃない?」