三日月の雫
「……じゃ、お疲れでしたー!」
初めて会った時と同じように、あっという間に時間が過ぎる。
柚羽はかなりの酒を飲み続け、柳さんに支えられて、やっと立っているという状態だった。
彼女を家まで送って行こうかと思った瞬間。
バイブ音にしていた携帯の振動を身体に感じる。
【かんな】
着信画面の名前を見て、僕は電話に出るのを止めた。
僕は腰に付けていた車のキーを取り出した。
「じゃ、結崎さん、気をつけてね!」
車を出そうとする僕に気付いて、柳さんが声をかける。
「うん、お疲れ様」
柚羽はぼんやりとした顔で、僕をただじっと見ているだけだった。