三日月の雫
「あ、タバコ買い忘れた」
自販機を見つけた僕は、話をそらす様に車を横付けし、タバコを買いに外に出た。
かんなとヨリを戻すことはできない。
それなのに、今こうして一緒にいるのは、かんなのリストカットだけが原因じゃなかった。
『……永輝、変なマネすんじゃねぇぞ。後のことは頼んだぞ』
あの日僕は、命を落とすか、警察の世話になるか、どちらかの選択を迫られていた。
けれど、ある人のおかげで、どちらも選ばずに済んだんだ。
ある人――。
それが、かんなの兄・啓介さんだった。