三日月の雫
・鍵・
車を出すと、僕はコーヒーを買いにバイト先に寄った。
店に入る前に、かんなに電話する。
『永ちゃん?まだ飲んでるの?』
心配と苛立ちが混ざり合ったような声だった。
「……うん。もうすぐバイト辞めるってヤツもいてさ。妙に盛り上がって」
『……ふうん。何時頃になりそう?』
「うーん…、まだ分からないよ」
今すぐ、帰ることだってできた。
だけど、もう少し一人になりたかった。
『なるべく早く帰ってきてね。待ってるから』
かんなはそう言うと電話を切った。