三日月の雫
「お疲れー」
店に入ると、飲み会に参加しなかった深夜メンバーが恨めしそうに僕を見た。
コーヒーを買ってバックルームに入ると、休憩中のバイトが一人いた。
「今日、飲み会だったんでしょ?」
そう口を尖らせて言うのは、柚羽たちと同じ大学に通う伊織。
伊織はタバコを吸いながら「いいなぁ」とぼやく。
「またやるみたいだから、今度は来いよ」
「絶対行きます!て言うか、今度はオレが幹事やります!」
予定の立たない飲み会に伊織は妙な張り切りを見せた。
伊織の休憩中、僕たちはくだらない世間話で盛り上がっていた。
そろそろ休憩が終わるという伊織の言葉に、僕はかんなの元に帰る時間がやってきたなと、深く溜息をついた。
柚羽やみんなと過ごした、楽しいほんのひと時。
すべてから解放された、久しぶりの時間だった。