三日月の雫
柚羽に鍵がなかったことを伝えると、彼女は一気に青ざめた。
…至福の時間だなんて、思っている場合じゃない。
浮かれて一瞬でもそんなことを思った自分を、僕は恥じた。
「店に電話してみよう。もしかしたら見つかってるかもしれないし」
そう言った時点で、柚羽はすでに涙をこぼしていた。
自然と僕の手は彼女の頭に触れる。
「泣くなって」
頭をそっと撫でながら、僕は店に電話をし、柳さんと話した。
柚羽の鍵は店にもなかった。
「店に戻ろう」
「……はい」
僕の左手は彼女から離れることができなかった。
不安そうに泣き続ける彼女を、抱きしめたいとも思った。