三日月の雫
だけど。
今の僕には許されない行為。
道を踏み外してしまったら、かんなはまた自分の身体に傷をつけてしまう。
啓介さんを、悲しませてしまう。
僕が自分の気持ちさえ抑えていれば、すべてが順調なんだ。
僕が我慢すればいい。
ただ、それだけのことだ。
それなのに僕は。
せめて今日だけは……と自分を何度も説得して、それを行動に移してしまった。
周囲からしてみれば、本当にたいしたことのない行動。
でも今の僕にとっては、未来を左右する始まりの一歩だった。