三日月の雫
第1章―過去―
・そばにいる理由・
中学二年の時。
一つ上の姉貴はかなり荒れていて、他校の生徒からも恐れられている存在だった。
僕もそこまではいかなかったけれど、素行は悪い方だった。
姉貴を通して、四つ上の啓介さんと出会った。
啓介さんはこの辺では有名な暴走族の総長だった。
僕は暴走族に憧れていたわけではなかったけれど、バイクが好きで、気付いた時には族の仲間になっていた。
『永輝、ガッコはマジメに行けよ?』
高校進学という現実を前に、啓介さんはそう言った。
集会よりも勉強を優先しろと、口うるさい母親のように説教したこともあった。
僕は昼間は普通の高校生、夜は族の一人という二束のわらじを履いていた。
それは僕に限らずで、仲間の中にも数人、そういうやつがいた。
警察がらみになると、啓介さんたちは率先して僕たちのような、二束のわらじ組を先に逃がした。