三日月の雫
車を走らせると、柚羽は実家に行ってほしいと頼んだ。
実家が合鍵を持っているからと。
僕はてっきり、実家が近くかと思っていたけれど、彼女は終電に間に合うからと駅へ向かうように言った。
ここまできてもなお、僕に頼ってくれない彼女に、苛立った。
中途半端にされる方が迷惑だと、僕は一喝した。
ビクッとした彼女の表情が胸に突き刺さる。
けれど、彼女の言うとおりに駅に送って、「じゃあね」と別れたくなかった。
……一人にさせたくなかった。
「……分かりました」
柚羽はそう言って、実家への道を僕に分かりやすく教えてくれた。
実家に着くと、柚羽は母親からこっぴどく怒られた。
「あれほど失くさないようにって言ったでしょ?それに人様まで巻き込んで、あんたって子は!」