三日月の雫

合鍵を渡しながら怒鳴る母親に、柚羽は小さな声で「ごめんなさい」と言う。



「お母さん、僕が強引に探そうって言ったんです。鍵ももう少し探してみますから」



僕がそう言うと、「本当に迷惑をかけてごめんなさいね」と言ったきり、柚羽への説教は終わった。



帰りの車の中。

僕と同じように、明日は朝から授業があるという柚羽に、少し眠ったほうがいいよと勧めた。

めずらしく柚羽は、素直に受け入れた。



……疲れたのかな。


運転しながら、隣で眠りにつく柚羽の顔を何度も見る。


そういえば…。

柚羽のアパートってどこなんだろう。

気持ち良さそうに寝ている柚羽を起こすのは気が引けた。

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