三日月の雫

僕は携帯の電源をオンにして、柳さんに電話した。



『あっ、結崎さん!?鍵、見つかりました?』



電話口に出るなり、柳さんは鍵の行方を聞いた。

実家に合鍵を借りに行ったことを告げると、柳さんは「一応は一件落着ね」とホッとしていた。

携帯をそのままにして、僕は柳さんに柚羽のアパートまでのナビを頼んだ。


柳さんに電話してからほんの数十分後に、アパートに着いた。



「ありがとう、柳さん」



僕は礼を言ってから電話を切ると、再び電源をオフにした。

まだ、誰にも邪魔されたくないという思いがあった。



「……あの、コーヒーでも飲んで行きませんか?」



眠っていた柚羽を起こし部屋の前まで送ると、彼女はすまなそうにそう言ってきた。

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