三日月の雫
新聞配達のバイクの音が聞こえる。
僕のためにコーヒーを淹れる時間があるのなら、そのぶん眠ってほしいと思った。
「ありがとう。でも、帰るよ。君も早く寝ないと」
柚羽の顔からは、僕に対する余所余所しい表情がすっかり消えていた。
「そうですね。今日は、本当にすみませんでした。そして、ありがとうございました」
「いえいえ。それじゃ、おやすみ」
「……おやすみなさい」
僕は笑って踵を返した。
……背中を向けた瞬間に、夢のようなひと時が終わった気がした。
かんなが、待っている。
そんな現実。
散々、責められるだろう。
どう言い訳をしよう。