三日月の雫
そう言いそうになった言葉を……
僕は一言たりも漏らさずに呑み込んだ。
――オレも、君が好きだよ。
過去がなかったら、すんなりと言えた一言。
ただ、それだけの短い言葉なのに。
自分の本当の気持ちなのに。
今の僕には、許されない。
「……早く寝なさい」
とても、胸が苦しかった。
気持ちを伝えることができない代わりに、もう少しだけ、彼女を抱きしめていたい。
太陽が顔を出そうとしている情景を、僕は彼女の頭越しにぼんやりと眺めていた。