三日月の雫
キーホルダーを見ると、流れるような筆記体で「Yuwa」と刻まれていた。


柚羽がなくした、アパートのカギだった。

どうして僕が持っているのか?とあの日の記憶を懸命に辿る。


拾った覚えもない。

柚羽に渡された記憶もない。


――……あ…!


あの時、僕の隣に座っていた、もうすぐバイトを辞めると言っていたヤツを思い出す。


最後まで話を聞かなかったけれど、何かを拾ったって言っていたような…。

もしかして、あいつが拾ったっていうのは、このカギのことだったのか?

でも、そのカギがどうして僕の元に……?


いや、そんな細かいことはどうでもいい。

とにかくカギを柚羽に返さないと。



「永ちゃん、あたしも一緒にシャワー浴びる」



洗面所のドアがノックもなしに突然開く。

僕は咄嗟にズボンの中にカギを隠した。

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