三日月の雫
そう告げても、僕の心境など理解してはもらえなかった。
1人にさせてしまうと、僕が何かするんじゃないかと、かんなは疑っていた。
ただ勉強をするだけだと言うと、かんなは気が狂ったように泣いて、僕を責めた。
「……戻ってこないか?」
そんな時に、僕に救いの手が差し伸べられた。
バイト中に、前の会社の社長がふらりと買い物にやって来た。
晩酌用だと言って、大量に缶ビールを買って行った。
専門学校のことを聞かれ、この調子じゃ試験に受からないことを苦笑しながら言うと、社長は穏やかな顔で言った。
「まだ、籍は残しているぞ?戻ってこないか?」
「……でも」
「無理にとは言わない。また残業漬けの毎日になるけどな」
会社にいた頃は残業ばかりの毎日で、社長の家で夕飯を摂ったり、風呂に入れてもらったりしていた。