三日月の雫
啓介さんの妹・かんな。
気付けば、彼女がいつもそばにいた。
『……付き合ってくれないか?』
かんなを好きになった僕は、高校一年の終わりに、そう告白した。
かんなは『いいよ』と微笑んだ。
付き合い始めてから僕とかんなとの間で変わったことといえば、体の関係をもつようになったこと、ただそれだけだった。
それ以外は、何も変わらなかった。
――……だけど。
人間の心なんて変わるものだ。
そして、僕は自分勝手だったのかもしれない。
付き合って一年もしないうちに、かんなに対する思いが無くなってしまい、彼女に別れを告げた。
その時も、かんなは笑って『分かった』と言った。