三日月の雫
「…そうですね。…戻ってきてもいいですか?」
本来ならこんなにも即決ではなく、考える時間がほしいと言うべきなんだろう。
だけど、勉強は思い通りに進まない、このまま続けて何の意味があるのだろうかと思うようになっていた。
会社に戻れば、バイトを辞めなければいけない。
柚羽のことが頭をよぎるけれど、今までだって、バイトで顔を合わせたことなんてほとんどなかった。
バイトを辞めて、会社に戻る。
一番喜んだのは、言うまでもなく、かんなだった。
「うん、絶対そのほうがいいわよ。永ちゃんは働く男って感じだもん」
「……なんだよ、それ」
「ふふっ」
きっと、男だらけの職場に戻ることが嬉しいんだろう。
かんなの機嫌の良さを、僕は違うところで知った。