三日月の雫
迷う間もなく、僕はロッカーから携帯を取り出すと柚羽の番号を登録した。
登録したからと言って、電話をかける時間が僕にあるのだろうかと思う。
――結崎さんが、好きです。
思いもしなかった、彼女の告白。
あれ以来、一度も顔を合わせていない。
顔を合わせても、あの告白の返事を、僕はできないだろう。
かんなとのことが続く限り、好きだなんて言えない。
だからと言って、「ごめん」と柚羽を拒否することもできない。
「……かんな。この前のカギ、知らないか?」
「えー?知らないよ?」
辞める前にカギを返さないといけないと思った。
だけど、カギは再び姿を消してしまった。